【文化の違い】日本人の「姓」と「名」、英語でどちらを先に言う?

2013年12月10日 - カテゴリ:文化の違い
私が学生の頃は、自分の名前を英語で言う際、英語の習慣に従って「名・姓」の順で言うようにと教わった。「山田太郎」なら、「Taro Yamada」という具合だ。現在でも、主流はその順番だろう。

しかし、現在では違った考えが出てきている。英語で自分の名前を言う際にも、日本語で言う場合と同じように「姓・名」の順番でよい、という考えだ。「山田太郎」なら、「Yamada Taro」となる。

英語でも日本語と同じように「姓・名」の順番で日本人の名前を語るべきという意見には、以下のような理由がある。

1.名前は固有名詞であり、話す言語によって姓名の順番が変わるのは、おかしい。また、英語が実質的な国際語となる中、文化の多様性を生かしていくべきだ。日本語が「姓・名」の順で名前を表記するなら、英語でもその順番で表記すべき。

2.他のアジアの国、例えば中国や韓国でも、本来の「姓・名」の順番で英語でも表記している。例えば、「毛沢東」は、「Mao Zedong」である。逆に、日本語では、西洋人の名前は、本来の「名・姓」の順で表記され、「姓・名」の順番にならない。例えば、「Tom Cruise」は「トム・クルーズ」である。

また、文部科学省の国語審議会でも、この「姓・名」問題について言及しており、日本人の名前も「姓・名」の順で表記することが望ましいとしている。その際、「姓」をすべて大文字(YAMADA Taro)にするか、姓と名の間にコンマを打つ(Yamada, Taro)などの方法をとることを推奨している。これはこれで、良いのだが、口頭で伝える際には、依然として問題が残る。


この「姓・名」順番問題は、結構難しい問題だ。

まず、上記1についてであるが、確かに人の名前は固有名詞であるものの、「姓」と「名」が分離されて認識されるという事実は、日本語でも英語でも変わらない。英語で「名・姓」の順であるべきとする習慣があるのであれば、その習慣に従うのは決して間違いではない。それによって、固有名詞としての識別能力が下がるわけではない。

そして、想像してほしい。いろんな国で英語が話されている今日、それぞれの国が自分の国の文化を主張して、「この国は姓・名の順番で」、「あの国は名・姓の順番で」などと言い出したら、かなり煩雑になるのではないだろうか。英語では、すべて「名・姓」の順番だ、という風に決定したほうが、よっぽど楽だ。

上記2ついて、中国や韓国で本来表記に従って「姓・名」の順番で英語でも表記しているという点については、中国や韓国が正しいということでもない。中国や韓国でも「姓・名」の順番で英語表記しているならば日本もそうしろ、などという意見には、何の根拠もない。

特に、中国人などは、英語名を語ることが多いが、英語名を語るときは、英語の習慣に従って、「名・姓」の順番にするのは普通である。例えば、ジョン・ウーは、「John Woo」である。中国系アメリカ人などで、中国姓を使う場合もそうだ。

そもそも、日本人が名前を英語で語る際に、英語の倣って「名・姓」と順にすると最初に決めたことには、日本人の勤勉性が表れていると思う。たとえ日本で「姓・名」の順番であるとしても、英語で「名・姓」がふつうであるのであればそれに合わせるというのは、相手の文化を尊重し、自分の文化を強要しないという、日本人の良い精神が表れている。「郷に入れば郷に従え」である。

一番合理的な方法は、英語では「名・姓」の順番で統一するということだ。中国人や韓国人なども、英語で名前を表記する際は、「名・姓」の順番に変えるようにする。

その代わり、欧米人が、例えば日本語で名前を紹介されるときには、「姓・名」と順番にする。例えば、これまでは「トム・クルーズ」だったのが、「クルーズ・トム」となる。中国語や韓国語でも同様の措置をとる。

この方法がもっとも合理的でクリアでフェアな方法であると思われる。この方法であれば、言語と文化との結びつきも維持され、それぞれの文化を尊重し、なおかつその言語における「姓・名」の順番の統一化も達成でき、誰も悩む必要がなくなる。

しかし、現実にこの方法を強制するのは、かなり困難だろう。文化や習慣は、かならずしも合理的ではなく、そしてルール作りによって簡単に変わるものでもないからだ。

また、英語が実質的な国際語として位置づけられ、英語の「名・姓」順の表記とする文化自体が、希薄化されてきているという側面もある。「英語」と「英語としての文化」の結びつきが弱くなり、「英語」が「いろんな文化によって共有される言語」となってきている現実があるのだ。これは、上記1で述べられている理由にも似ている。

結局のところ、個人が各々自分が良いと思う方法で表記するしか、当面の解決法としてはないような気がする。そして、必要な場合には、どちらが「姓」でどちらが「名」であるかを相手に伝えるようにする。面倒くさいが仕方がない。



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